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冷たいものがしみるのは知覚過敏? それともむし歯?

「しみるのは知覚過敏ですか、それともむし歯ですか」。歯がしみる方から、診療室でよく聞かれる質問です。冷たい水を口に含んだとき、歯ブラシが当たったとき、一瞬キーンとくる。少しすると治まるので、受診するほどか迷う方も多いと思います。知覚過敏用の歯みがき剤で様子を見ながら、むし歯ではないかと気になっている方も少なくありません。

先にお伝えすると、しみる原因を、ご自身で知覚過敏かむし歯かに見分けるのは難しいことです。しみ方にはいくつか手がかりがありますが、最後は歯を見て確かめることになります。この記事では、歯がしみる仕組み、知覚過敏の背景になりやすい習慣、むし歯のしみ方との違い、市販の歯みがき剤で様子を見るときの目安を順にお話しします。

歯がしみる仕組み

歯の表面は、エナメル質という硬い層で覆われています。その内側にある象牙質には、歯の神経のほうへ続く細い管が無数に通っています。歯ぐきが下がったり、表面がすり減ったりして象牙質が出てくると、冷たさや歯ブラシの刺激が神経に伝わりやすくなります。これが、いわゆる知覚過敏です[1]。

知覚過敏の痛みは、冷たいもの、歯ブラシの毛先、風、甘いものや酸っぱいものなどに反応して起こる、短く鋭い痛みが特徴です[1]。そしてもう一つ大事な点があります。知覚過敏は、むし歯や歯の欠けなど、ほかの原因では説明できない「しみ」を指す言葉です[1]。ですから、知覚過敏と言えるのは、むし歯やひびなどがないと確かめたあとになります。

決して珍しい症状ではありません。世界の調査をまとめた報告では、研究ごとの違いを考えに入れた見積もりで、およそ1割の人に知覚過敏がありました[2]。ただ、個々の調査の数字には大きな幅があり、単純に平均すると3人に1人ほどになります[2]。対象の年齢や調べ方で、数字は大きく変わります。

知覚過敏の背景になりやすい習慣

歯ぐきが下がったり、歯がすり減ったりして象牙質が出てくると、知覚過敏が起こりやすくなります[1]。強い力での歯みがき、硬めの歯ブラシ、歯ぎしりや食いしばりなどが関係する場合もあります[1]。ただ、いくつかの要因が重なっていることも多く、一つの習慣だけを原因と決めることはできません。

食べ物や飲み物も関係します。炭酸飲料やジュースなど酸っぱいものを頻繁にとる習慣や、胸やけで胃酸が上がってくることも、歯の表面を弱らせる要因になります[1]。ホワイトニングをきっかけにしみることもあります[1]。

日本の歯科の学会誌に載った解説では、こうした項目を並べた患者さん向けのチェック表が提案されています[1]。表には喫煙の習慣なども並んでいます。ご自身の習慣に気づくきっかけとして役立ちます。ただ、当てはまる項目があるだけで、それが原因とは決められません。当てはまる数で知覚過敏かどうかを決めることもできません。思い当たる習慣があれば、見直しつつ、歯の状態は診査で確かめてください。

歯ぎしり・食いしばりが気になる方は、以前の記事「朝起きると顎が疲れるのはなぜ?歯ぎしり・食いしばりとナイトガード」もあわせてご覧ください。

むし歯のしみ方は、どこが違う

むし歯も、ある段階になるとしみます。むし歯がエナメル質の中にとどまっている間は、自覚症状がほとんどありません。象牙質まで進むと、甘いものや冷たいものがしみることがあります[3]。つまり、冷たいものがしみるという症状だけでは、知覚過敏とむし歯を区別できないのです。

むし歯が深くなると、熱いものでもしみたり、食事のときに痛んだりします。何もしていなくてもズキズキ痛むこともあります[3]。ただ、症状の種類だけで、むし歯の深さや原因を決めることはできません。しみる時間が長くなった、熱いものでも痛む、何もしなくても痛む。こうした変化は、むし歯や神経の炎症、歯のひびなどのサインかもしれません。早めに歯科医院を受診してください。

反対に、短くキーンとしてすぐ治まるからといって、むし歯ではないとは言い切れません。詰め物の境目のすき間や、歯のひびも、しみる原因になります[1]。知覚過敏とほかの病気との見分け方には、広く統一された手順がまだありません[4]。実際の診療では、しみ方を伺い、歯を診て、むし歯やひびなどがないかを一つずつ確かめていきます。自己判断より、歯を見て確かめるほうが近道です。

市販の歯みがき剤で様子を見るときの目安

ここからは、むし歯やひびなどがないことを歯科医院で確かめたあとの話です。ほかの原因が見つからない場合、知覚過敏への最初の対応は、知覚過敏用の歯みがき剤を使い続けることです[1]。こうした歯みがき剤には、神経の反応を抑える成分や、象牙質の細い管をふさぐ成分が入っています[1]。

知覚過敏と診断された大人を対象にした臨床試験を比べた報告では、スズ、カリウム、アルギニンのいずれかを含む歯みがき剤を1日2回使うことが、痛みを和らげる方法として勧められています[5]。比べたのは比較的短い期間の効果で、むし歯やひびが原因の痛みを対象にした結果ではありません。効き方には個人差があり、すぐに効くとは限りません。数日から数週間ほど続けて様子を見るのが一つの目安です[1]。

使っていてもしみる状態が変わらない、むしろ強くなる。そんなときは、市販品で様子を見続けず、ご相談ください。歯みがき剤で一時的にしみなくなっても、その下でむし歯が進んでいないかは別の話です。

当院での診査と治療の流れ

最初に伺うのは、「どうなったらいいと思いますか?」ということです。冷たい飲み物を気にせず飲みたいのか、むし歯かどうかだけ確かめたいのか。望みによって、診査のあとのご提案が変わります。

そのうえで、しみる歯の場所、しみ始めた時期、しみ方を伺い、歯と歯ぐきを診査します。詰め物の境目やひびが疑われ、拡大して確かめる必要があるときは、肉眼の20〜30倍まで拡大できるマイクロスコープを使うことがあります。見つかったことは、映像や模型を使ってご説明します。

むし歯や歯のひびなどが見つかった場合は、状態と治療方法、費用をご説明し、ご相談のうえで治療を進めます。原因になる問題が見つからなければ、歯みがき剤と磨き方の見直しから始め、必要に応じて、しみる部分に薬を塗ったり、表面を覆ったりする処置を検討します[1]。削った天然歯は再生しません。当院では、できるだけ削らない治療を心掛けています。しみるからといって、すぐに削る治療を選ぶわけではありません。

しみる症状は、磨き方の癖と結び付いていることがあります。定期検診の間隔を決めるとき、当院が一番重視しているのは、みがき残しの割合です。

よくあるご質問

  1. 知覚過敏用の歯みがき剤を使えば、むし歯も防げますか。知覚過敏用の成分は、しみる感覚を抑えたり、象牙質の細い管をふさいだりするためのものです[1]。できてしまったむし歯を治すものではありません。しみる症状が落ち着いていても、定期的に歯の状態を確かめることをお勧めします。
  2. 冷たいものだけがしみて、痛みはすぐ治まります。受診したほうがいいですか。すぐ治まる場合でも、むし歯や詰め物の境目の問題でないことは、診査しないと分かりません。一度診査を受けておくと、歯みがき剤で経過を見てよいのか、治療が必要なのかを判断する材料になります。
  3. しみる歯は、神経を取ることになりますか。知覚過敏であれば、歯みがき剤や薬を塗る処置から始めることが一般的です[1]。神経の治療が必要かどうかは、むし歯の深さや痛み方によって変わるため、診査のあとでご説明します。

ご相談ください

冷たいものがしみる、歯ブラシが当たるとキーンとする。その原因が知覚過敏なのか、むし歯やひびなのかを確かめるところからお手伝いします。症状が軽く、受診するほどか迷う段階でもご相談いただけます。痛みが強い、歯ぐきや顔が腫れているといったときは、お電話でご相談ください。

気になる症状があれば飯田橋エトワール歯科医院へご相談ください。お昼休みの時間帯や土曜日も診療しています。ご予約は https://apo-toolboxes.stransa.co.jp/user/web/1985667623c124527e37ecda41f95a58/reservations から承っています。

参考文献

  1. 宮崎真至, 辻本暁正. 患者目線で象牙質知覚過敏を理解する. 日本歯科保存学雑誌. 2026;69(1):1-5. https://www.jstage.jst.go.jp/article/shikahozon/69/1/69_1/_article/-char/ja/
  2. Favaro Zeola L, Soares PV, Cunha-Cruz J. Prevalence of dentin hypersensitivity: systematic review and meta-analysis. J Dent. 2019;81:1-6. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/30639724/
  3. 山口県歯科医師会. 歯と口の知識<むし歯について>. https://www.ygda.or.jp/knowledge/caries.html
  4. Liu XX, Tenenbaum HC, Wilder RS, 他. Pathogenesis, diagnosis and management of dentin hypersensitivity: an evidence-based overview for dental practitioners. BMC Oral Health. 2020;20(1):220. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/32762733/
  5. Pollard AJ, Khan I, Davies M, 他. Comparative efficacy of self-administered dentifrices for the management of dentine hypersensitivity: a systematic review and network meta-analysis. J Dent. 2023;130:104433. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/36753794/

免責

本記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の診断や治療方針を示すものではありません。掲載した研究結果は特定の条件で調べた集団の傾向であり、症状の経過や適した対処には個人差があります。ご自身の歯の状態については、歯科医院で診査を受けたうえでご相談ください。

執筆者情報

院長(歯学博士)

Naohiro Morikage

飯田橋エトワール歯科医院のホームページにご訪問いただき、ありがとうございます。
当院では働く方でも通いやすいように、お昼休みの時間帯や土曜日の診療も行っております。また、安心して治療を受けていただけるように、徹底した衛生管理と高品質な治療設備を導入し、患者さん一人ひとりに合わせた適切な診断と治療をご提供できるよう心がけております。お忙しくてなかなか歯科医院に行けなかったという方も、ライフスタイルに合わせた短期間で正確な治療プランをご提案いたしますので、ぜひご相談ください。

経歴

  • 2011年

    日本大学歯学部総合診療科にて研修

  • 2012年

    日本大学歯学部口腔診断科学講座 入局

  • 2013年

    日本大学歯学部口腔診断科学講座 専修医

  • 2014年

    奥羽大学歯学部口腔外科学講座 臨床助手

  • 2015年

    都内開業医勤務

  • 2018年

    飯田橋エトワール歯科医院 開院

修了セミナー

[全顎的治療]

  • Education for Oral Rehabilitation ベーシック・マスターコース(高橋登先生)

[アライナー矯正]

  • アライナー矯正治療コース(尾島賢治先生)

[CEREC]

  • CEREC Basic Course (風間龍之輔先生)
  • CEREC道場(北道敏行先生)
  • CERECコース(小池軍平先生)

[審美歯科、保存修復]

  • ダイレクトボンディング ベーシック・マスターコース(高橋登先生)
  • プレパレーションセミナー(岩田淳先生)
  • C.R.E.Dセミナー(高田光彦先生)
  • ADI 実践コース (二宮佑介先生、榊航利先生)
  • Anterior&Posterior Restoration-2days Lecture(Marco Gresnigt先生)

[歯周病]

  • JIPIぺリオコース(牧草一人先生)

[インプラント]

  • Urban Regeneration Institute Advanced Hard and Soft Tissue Course(Istvan Urban先生)
  • 水口インプラント道場 (水口稔之先生)
  • ブローネマルク・コンセプトによるインプラント・コース(小宮山 彌太郎先生)
  • SBICインプラントコース (中澤玲先生)
  • 生体主導型歯科臨床セミナー (山道信之先生)