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差し歯の根元が黒いのはなぜ?前歯をやり直す前に確かめること
「差し歯の根元が黒っぽく見えるんです」「昔入れた前歯だけ、色が浮いている気がして」。前歯の被せ物について、診療室でよく伺う言葉です。痛みはないので後回しにしてきたけれど、人と話すときや写真に写ったときに気になる。そんな方が多いように感じます。
この記事では、一般に「差し歯」と呼ばれる前歯の被せ物についてお話しします。黒ずみや色の違いの原因は一つではありません。原因によって、被せ物を替えれば済むこともあれば、歯ぐきや歯の根の状態から考え直す必要があることもあります。この記事では、よくある原因と、やり直しを考えるときに確かめることをお話しします。
境目が黒く見えるのは、金属の影のことがあります
差し歯には、中に金属が入っているものがあります。土台が金属のこともあれば、被せ物の内側が金属で、外側にセラミックを焼き付けたものもあります。どちらも、表からは白く見えます。
ところが、歯ぐきの縁のあたりが、灰色や青っぽく見えることがあります。金属の色が影響して暗く見える場合もあれば、金属に由来する色が歯ぐきに付く場合もあります。
ニッケルクロム合金という金属でつくった土台と、金属にセラミックを焼き付けた被せ物を入れた歯を調べた小規模な研究があります。入れてから3か月の時点で、4割ほどの歯の歯ぐきに変色が見られました[2]。特定の材料と条件での結果で、差し歯全般で同じ割合になるという意味ではありません。変色が見られた歯では、治療前から歯ぐきの炎症などを示す値が高い傾向もありました[2]。ただ、歯ぐきの状態が変色を引き起こしたと確かめた研究ではありません。
黒ずみには、被せ物の素材だけでなく、歯ぐきの状態も関わっているのかもしれません。原因が金属の影なのか、ほかの理由なのかは、実際に診てみないと分かりません。
歯ぐきが下がると、境目が見えてきます
入れたときにはきれいだった差し歯の境目が、何年かたつと見えてくることがあります。歯ぐきが少しずつ下がり、被せ物の縁や、その下の歯の根が見えてくるためです。
歯ぐきが健康な11人を対象に、被せ物を入れた上の前歯と小臼歯を、被せ物のない歯と比べて1年間追いかけた小規模な研究があります。被せ物を入れた歯では、歯ぐきの位置が下がる傾向が見られました[1]。歯ぐきの幅が狭いことなども、歯ぐきと歯の付き方の変化に関わっていました[1]。ただ、この研究では多くの歯で被せ物の縁が歯ぐきの内側に置かれていて、すべての被せ物に同じ結果が当てはまるわけではありません。歯ぐきの幅だけで将来の下がり方を予測できるわけでもなく、個人差も大きいものです。
歯の根の部分は、被せ物とは色が違います。金属の土台が入っている歯では、根のまわりの歯ぐきが灰色っぽく見えることもあります[2]。歯ぐきが下がってその部分が見えてくると、境目が黒く見えたり、色の違いが目立ったりします。
この場合、被せ物だけを新しくしても、下がった歯ぐきは元の位置には戻りません。被せ物の縁をどこに置くか、歯ぐきの状態をどう整えるかを、あわせて考える必要があります。
やり直す前に確かめること
差し歯を外してみて初めて分かることもあります。そのため、やり直しを決める前に、できる範囲で中の状態を確かめておくことが大切になります。
確かめるのは、被せ物の縁にすき間がないか、境目にむし歯ができていないか、歯の根や土台に問題がないか、歯ぐきに炎症がないか、といった点です。必要に応じてエックス線撮影を行い、歯の根やまわりの骨の状態も確認します。先ほどの研究[1]でも、被せ物を入れる前に、歯と歯ぐきの境目を詳しく調べる大切さが示されています。
当院では、診査の内容に応じて、肉眼の20〜30倍まで拡大できるマイクロスコープで境目の状態を確認します。黒ずみの原因が金属の影なのか、すき間やむし歯なのかを見分けるためです。歯科治療で削った歯は元に戻らないので、外す範囲や削る量もできるだけ少なくすることを心掛けています。
そのうえで、まず「どうなったらいいと思いますか」とお聞きしています。境目の黒ずみだけを目立たなくしたいのか、隣の歯と色や形をそろえたいのか、ほかの前歯もまとめて考えたいのか。望みによって、選ぶ方法も変わります。検査の結果は、映像や模型を使ってご説明し、必要な処置と費用は治療前にお伝えします。
素材の選び方
土台を含めて金属を使わない方法にすると、金属による暗さを抑えられる可能性があります。ただ、歯の根や歯ぐきの状態によっては、暗さが残ることもあります。
強さについては、歯で支える1本の被せ物を対象にした研究をまとめた報告があります。一部の種類のセラミック(二ケイ酸リチウムやジルコニア)は、5年後に口の中に残っている割合が、金属にセラミックを焼き付けたものと同じくらいでした[3]。ここでいう「残っている」は、欠けや手直しがまったくなかったという意味ではありません。一方で、種類や構造によって成績や欠けやすさには差があり、どれでもよいわけではありません[3]。
どの素材でも、被せ物のために歯を削る必要があります。治療後にしみることや、欠け・割れ、外れることもあります。色も、天然の歯とまったく同じ見え方にするのは難しい場合があります。
前歯は見た目が大切ですが、噛み合わせや歯ぎしりの有無によっても向く素材が変わります。素材ごとの違いは、以前の記事「銀歯を白くしたい——詰め物・被せ物の選び方と素材の違い」で詳しくお話ししています。
当院には、口の中を3D画像で記録する口腔内スキャナーと、院内でセラミックを設計・製作する設備(CEREC)があります。どの素材で、どの方法でつくるかは、診査のうえでご相談して決めます。
よくあるご質問
Q. 黒ずみは、被せ物を替えればなくなりますか。 原因によります。中の金属が透けている場合は、金属を使わない素材に替えると目立ちにくくなることが期待できます。歯ぐきが下がって根が見えている場合は、被せ物を替えるだけでは改善しないこともあります。診査で原因を確かめてからご説明します。
Q. 痛みがなければ、急がなくてもよいですか。 すぐに困ることがない場合もあります。ただ、境目にすき間やむし歯があっても、痛みが出ないまま進むことがあります。気になり始めたときに一度診てもらうと、急ぐ必要があるかどうかが分かります。
Q. 1本だけ替えると、ほかの歯と色が合わなくなりませんか。 周りの歯になじむ色を目指してつくります。ただ、天然の歯の透明感や光の当たり方によっては、同じ見え方にするのが難しいこともあります。ほかの前歯もあわせて考えるかどうかは、ご希望を伺ってご相談します。
Q. 相談したら、その日のうちに差し歯を外すことになりますか。 通常、ご相談の日に外すことはありません。ただ、痛みがある場合や差し歯が外れた場合などは、応急の処置をご相談します。まず検査で原因を確かめ、結果と治療の方法、費用をご説明します。やり直すかどうか、どの方法にするかは、ご説明を聞いたうえで決めていただきます。検査の結果、今すぐやり直す必要はないとお伝えすることもあります。
ご相談ください
前歯の差し歯の黒ずみや色の違いには、金属の影、歯ぐきの下がり、境目のトラブルなど、いくつかの原因があります。どれが当てはまるかによって、やり直しの方法も変わります。見た目が気になる段階でも、痛みなどの症状がなくても、まずはご自身の場合の原因を聞いてみてください。
気になる症状があれば飯田橋エトワール歯科医院へご相談ください。平日はお昼休みの時間帯も、土曜日は17時まで診療しています。ご予約は https://apo-toolboxes.stransa.co.jp/user/web/1985667623c124527e37ecda41f95a58/reservations から承っています。
参考文献
- Koke U, Sander C, Heinecke A, Müller HP. A possible influence of gingival dimensions on attachment loss and gingival recession following placement of artificial crowns. Int J Periodontics Restorative Dent. 2003;23(5):439-445. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/14620118/
- Ristic L, Dakovic D, Postic S, Lazic Z, et al. Clinical Characteristics of Abutment Teeth with Gingival Discoloration. J Prosthodont. 2019;28(1):e45-e50. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/28383139/
- Pjetursson BE, Pitta J, Balet A, Bjarnadottir GR, et al. A Systematic Review and Meta-analysis Evaluating the Survival, Failure, and Complication Rates of Metal-Ceramic, Veneered, and Monolithic All-Ceramic Tooth-Supported Single Crowns-Part 1. Int J Prosthodont. 2026;39(3):308-324. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/41489982/
免責
本記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の診断や治療方針を示すものではありません。黒ずみや色の違いの原因、適した治療方法は、歯や歯ぐきの状態によって異なります。掲載した研究結果は特定の条件で調べた集団の傾向であり、経過には個人差があります。被せ物のやり直しでは、外した後に追加の処置が必要になることがあります。ご自身に適した治療については、歯科医院で診査を受けたうえでご相談ください。
執筆者情報
院長(歯学博士)
森蔭 直広Naohiro Morikage
飯田橋エトワール歯科医院のホームページにご訪問いただき、ありがとうございます。
当院では働く方でも通いやすいように、お昼休みの時間帯や土曜日の診療も行っております。また、安心して治療を受けていただけるように、徹底した衛生管理と高品質な治療設備を導入し、患者さん一人ひとりに合わせた適切な診断と治療をご提供できるよう心がけております。お忙しくてなかなか歯科医院に行けなかったという方も、ライフスタイルに合わせた短期間で正確な治療プランをご提案いたしますので、ぜひご相談ください。
経歴
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2011年
日本大学歯学部総合診療科にて研修
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2012年
日本大学歯学部口腔診断科学講座 入局
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2013年
日本大学歯学部口腔診断科学講座 専修医
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2014年
奥羽大学歯学部口腔外科学講座 臨床助手
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2015年
都内開業医勤務
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2018年
飯田橋エトワール歯科医院 開院
所属学会
- 日本口腔診断学会 会員
- 日本口腔顔面痛学会 認定医
- 日本口腔外科学会 会員
- 日本口腔インプラント学会 会員
- 日本臨床歯科CADCAM学会 会員
- 日本アライナー矯正歯科研究会 会員
修了セミナー
[全顎的治療]
- Education for Oral Rehabilitation ベーシック・マスターコース(高橋登先生)
[アライナー矯正]
- アライナー矯正治療コース(尾島賢治先生)
[CEREC]
- CEREC Basic Course (風間龍之輔先生)
- CEREC道場(北道敏行先生)
- CERECコース(小池軍平先生)
[審美歯科、保存修復]
- ダイレクトボンディング ベーシック・マスターコース(高橋登先生)
- プレパレーションセミナー(岩田淳先生)
- C.R.E.Dセミナー(高田光彦先生)
- ADI 実践コース (二宮佑介先生、榊航利先生)
- Anterior&Posterior Restoration-2days Lecture(Marco Gresnigt先生)
[歯周病]
- JIPIぺリオコース(牧草一人先生)
[インプラント]
- Urban Regeneration Institute Advanced Hard and Soft Tissue Course(Istvan Urban先生)
- 水口インプラント道場 (水口稔之先生)
- ブローネマルク・コンセプトによるインプラント・コース(小宮山 彌太郎先生)
- SBICインプラントコース (中澤玲先生)
- 生体主導型歯科臨床セミナー (山道信之先生)






